生きがいについて

ある本を読み始めて最初の数行で心が捉えられてしまいました。それはこんな言葉でした。

世の中には、毎朝目がさめるとその目ざめるということがおそろしくてたまらないひとがあちこちにいる。ああ今日もまた1日を生きて行かなければならないのだという考えに打ちのめされ、起き出す力も出てこないひとたちである。

この本は神谷美恵子さんが書かれた「生きがいについて」です。神谷さんはすでに亡くなられていて、初版はなんと1966年という僕が13歳の頃ということが驚きでした。

驚きというのは内容が現代の社会状況においても古びていないこと。そして僕がこれまで50年以上もこの本、この著者のことを知らなかったということです。

僕が読んだのは「神谷美恵子コレクション」という形で再販されたものです。

この本に行き着いたのは若松英輔さんの「詩と出会う 詩と生きる」からです。若松さんとの出会いはある読書会で読んだ著書の「イエス伝」からでした。その後は若松さんのゆるい追っかけ的な感じになっているかもしれません。

さて「生きがいについて」ですが、ここまで書きながら上手に内容に触れることができません。それは本当に美味しいラーメンに出会ったときには言葉にできないのに似ているかもしれません(違うか!)。

人はどこかでと言いますか常に生きがいを求めて生きていると言っても良いかもしれません。でも生きがいを全身に満たしながら生きている人はいないでしょう。人はみんな生きがいと、生きがいから遠い感覚の間で生きています。生きがいを熱く求めるづける人、いつまでも手に入りそうにない生きがいを求めることを早々に諦めて生きてみる人・・・、さまざまだと思います。

また難しいのは憧れの中に生きがいがあると勘違いしてしまい、遠い空の下の暮らしばかりを夢想してしまうこともあるでしょう。

ちょっと僕がデビューした時に感じた感触と似ているかもしれません。デビューしたら新しい地平が鮮やかに見えるとどこかで思っていました、特にそうではありませんでした。華やかにはなりましたがそこは同じ場所でした。もし自分から抜け出せたのならば鮮やかな新天地に飛び込むことができたのかもしれませんがそれでは本末転倒です。

ところで「生きがい」という言葉は日本語独特な用言で外国語に翻訳が難しいそうです。なのでこれは東洋的な心の捉え方見つめ方から生まれてきた言葉なのかもしれません。

本を読み終えて思うことはただ「読んでよかった」です。残念に思うのは「もっと若い頃に読んでおけばよかった」です。だって僕が中学生の時には出版されていたわけですからね。

 

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