おもしろ話(11)
おもしろ話はなにも旅の途中に起こるとばかりは限りません。ステージの上でも起こることがあります。
小坂忠さんとのデュオ時代のこと、多分四国のどこかだったような気がするのですが、大きなホールでのことでした。
その日は緞帳が下りていて、僕たちが音を出すと同時に緞帳が上がるという流れになっていたんです。
袖から舞台監督の合図が出て、僕たちはイントロを弾き始めました。少しの間をおいて緞帳が動きだす音がしました。舞台も会場も、さあ始まるぞという高揚感が高まる中、なんと緞帳の一番下で重しになっているパイプにマイクのケーブルが絡んでいたのです。
緞帳が上がるのと一緒にマイクケーブルも引っ張られて、マイクスタンドもズルズルと動き出したんです。僕たちはなにが起こったのか理解できずに、動いてゆくマイクを追いかけながら歌っていました。
もちろん緞帳は途中で止められて大事には至りませんでしたが、あのまま上がっていったらコンサートごとオジャンになってしまっていたと思います。
ここから後の記憶は定かではないのですが、もう一度緞帳が降りているところからやり直したのだと思います。二度目にスムーズに緞帳が上がっても、お客さんの目にはマイクを追いかけながら歌っていた2人の姿が焼きついていたことと思います。こんなことがあったらもうリセットはできませんよね。
舞台で大怪我をしてしまった役者さんもおられます。舞台には思いがけない危険が待ち構えていることがあるので、舞台に上がる時にはみなさんもご注意ください。