おもしろ話(29)
最近近所にジビエ料理の店がオープンしたようです。ジビエ料理に興味はありますが夫婦で食事をとなるとなかなか足が向かないのが正直なところです。
沖縄でコンサートの合間の休日に食事に招待したいという連絡をいただきました。食事は山羊料理とのことで、とにかく一度食べてみませんかという招待でした。そりゃあ「コンサートと食事は断らない」、というわけのわからないフレーズが生きていた時代ですから、ふたつ返事で翌日の約束をしました。
お昼前にそのあ宅に到着すると特に変わった匂いもしないので少しホッとしました。「食事ができるまで少し散歩でもしてきてください」というのでしばし散歩をして戻ると、家の中の匂いは一変していました。漫画で匂いをプ〜ンって白抜きで書いたみたいな感じで、なんとも言えない匂いが立ち込めていました。
そのうちにどうやらこの食事のために一頭の小山羊を屠ったらしいという情報が漏れ聞こえてきました。そして目の前にある料理は今朝屠った小山羊であることがだんだんはっきりとしてきたのです。そうなると口に合わないという選択肢はないし、食べられないなんて口が裂けても言うことができません。
最初に内臓を焼いたものが運ばれてきて、次に山羊の味噌汁?が運ばれてきました。
僕は意を決して気分を思いっきり盛り上げて「ふんふん、なるほど」的な感じで明るくその汁を平らげました。
なんとか責任を果たしたぞとホッとしていたら、そんなにお好きならばもう一杯いかがですと次が運ばれてきました。心はしっかり涙目ですが口の方は「あ、あ、あ、りがとう、ご、ざ、います」なんて言っているではありませんか。そして2杯目にチャレンジしましたが、ここからの記憶は途絶えてしまっています。そこから意識がなくなってしまったのかもしれません(汗)。
でも多分人生に1度の貴重な経験をさせていただきました。それにしても自分たちの食事のために1頭の山羊が屠られることになるなんて想像もしませんでした。
食事の前に手を合わせ「いただきます」というのは命をいただきますだと聞いたことがありますが、本当にそうだと思います。このようにリアルに屠られた動物をいただいたことはありませんが、日々命をいただいているんですもんね。
この山羊料理に関しては沖縄ローカルの人でも好き嫌いが分かれるようです。だって先日観たテレビではこの汁の匂いを「運動部の部室にある靴下の匂い」だとか「洗っていない犬の匂い」だとか言っていました。やっぱ、ちょっと、無理ですよね。いや、だいぶ無理ですね。