思い出す三つのことば
以前自分にかけられたことばでふと思い出す三つのことばがあります。それを今朝も思い出したので書いてみようかと思い立ちました。
まず最初は二十歳前のことで、ハッピーエンドやムーンライダースが所属していた風都市のオフィスを訪ねてプロデューサーの前島さんとお話しした時のことです。彼がどんなことばをくれたかというと「岩渕くんが日本で君しか歌えない歌を歌えるようになったら一緒にやりましょう」です。
次は時を前後して言われた新音企画という事務所のマネージャーの方のことばです。それは僕の歌を聴いて彼が「岩渕くんの歌は優しいね」と言ってくれたことばに僕が「いえ僕は優しくありません」と答えた時に返ってきたことばで、「じゃあ優しくなりたいんだね」です。
もうひとつはクリスチャンになって、ある意味ウキウキしていた頃のことです。ちょうど「パラダイス」のようなクリスチャンソングを作り始めた頃のこと、ある宣教師の人が言ってくれた「君の歌には悲しみがない」です。
最初の前島さんのことばは四十代後半くらいになって実現してきたように思います。僕自身は今でも変化し続けている部分がありますが、いくら変わろうとしてみても岩渕という人からははみ出せなくなったからです。もう一歩踏み出して言うと、多分ものまねをしなくなった、あるいはできなくなったと言うことかもしれません。
「優しくなりたいんだね」は今も変わらないと思います。常に自分に対して幾つかの「・・・たい」を持って生きています。優しさもそうですが掴めたと思った瞬間に逃げてゆくのではないでしょうか。そして常に追い続ける。
「君の歌には悲しみがない」は当時全くピンときませんでした。クリスチャンとして[救われて喜んでいるんだから]悲しみなんてなくて良いんじゃないの・・・、的な感じでしたが、今ではこのことばの言わんとしていることがわかるようになりました。