歌の物語

昨日は震災復興関係の番組の撮影でした。 内容は3曲とコメントの撮影で、アングルを変えて1曲を2回ずつ歌いました。途中ミス(汗)もありながら比較的にスムーズに終えることができてほっとしました。別テイクのトークの方もテイクワンでOKとなりホッとしました。

話は飛びますが、僕がデビューした70年代後半のレコーディングは24チャンネルのマルチトラックのテープレコーダーで録音をしていました。今のコンピューターでのレコーディングのようにアンドゥができませんから、ミュージシャンはもちろんエンジニアのやり直しができないという緊張感は半端なかったと思います。

そんな当時、ボーカルのレコーディングは1曲を何度も歌って良いところをつなぎ合わせることが主流?だったように思います。まさにマルチトラックを謳歌しているような感じです。またそれを巧みにディレクションするのがディレクターの腕みたいな感があったくらいです。

しかしそんな当時でも美空ひばりさんは「1度しか歌わない」と言ったと伝説になっています。おそらくこれは本当だと思います。実はレコーディングされた歌が音程その他の技術的なことが体裁よく整ったとしても、それが歌として良いかどうかはまったく別問題だからです。大切なのは歌の物語です。

実は僕もレコーディングで歌うのは3回が限度だと思っています。もちろん声が枯れるまで歌うことはできますが、それはもう技術的に歌っているだけで肝心の歌への感動は減っています。言い方は悪いですが、ただ歌っているだけということになりかねないのです。そうすると何度歌ってもなんか違う感が消えずに何度も何度も歌うという無限ループへ突入していくことになります。

僕もこれまでかなりの数のレコーディングを経験してきましたので、その辺の感じはわかっているつもりです。なので昨日の収録も3回以上歌うとそうなってゆくことがわかるので、必要なテイクは1度で決めたいと思っていました。昨日はそれがなんとかそのようになり無事に収録を終えることができました。

やっぱ人生は物語なのかなあ・・・。

日記, 音楽

Posted by buchi