もうどうにも戻れない

昔はブルースハープと呼んでいたテンホールズハーモニカは、ひとつの吹き口ごとにふたつの音程があります。テンホールズという名前の通り10個しか吹き口がないのに3オクターブをカヴァーしているという、小さくても力持ちなハーモニカです。僕が愛用しているSUZUKIハーモニカのサイトからお借りした吹き口と音程の表です。

SUZUKIハーモニカさんのサイトより拝借

真ん中の第2オクターブは順番に吹けば音程が出ますが、第1オクターブと第3オクターブでは欠けた音程あります。この欠けた音をベンドという奏法で出すんです。テンホールズハーモニカの演奏を聴いたことのある方は、ギターのチョーキングのように音程を上げ下げしているのをご存知だと思います。

例えば第1オクターブのラの音程はシの音を吸う時に口をすぼめるみたいにして音程を下げます。ついでのファの音程もないわけですが、これはなんと吸う方のソ(ソがふたつあるんです)の音を口をすぼめて下げます。実はブルースハープらしい演奏というのはこの第1オクターブがいかに吹けるかにかかっています。しかし残念ながら僕はまだまだそれらの音程をすんなりと出すことができません。これは練習あるのみなんですがそれがなかなかできません。レッスンでは受講生に毎日弾きなさいと言っているんですが・・・。

そしてこのハーモニカをブルースやロックな感じにするのが違うキーのハーモニカを使うことなんです。「は!」ですよね。例えばキーG(ト長調)の曲にはキーC(ハ長調)のハーモニカを使うんです。そうするとドレミファソラシドの音階のシの音程が半音下がることになります。このシ♭の音がブルースらしさ、ロックらしさをかもしだすわけです。

少しだけ説明しますとキーGのドレミファは音名で言うとソラシドレミフ「ァ♯」ソとなります。ではキーCの音階はと言いますドレミ「ファ」ソラシドとなります。この2種類のキーの音階で違う音はファの音だけです。なのでキーCのハーモニカをキーGの曲で使っても、ファの音以外は同じ音なので使うことができるんです。そしてキーGの演奏で欲しいファの音が出せるということになります。面倒ですよね。

僕はこのキーGにキーCを使う以外に、キーGm(ト短調)の曲にキーF(ヘ長調)のハーモニカを使います。そうするとキーGmで欲しい音が出せるようになるんです。これまた面倒ですよね。

というわけでミュージシャンはそれなりに頭を使います。本当は頭じゃなく、そういうもんかとキーのことなんか考えずにスッと吹けるのが良いと思うのですが。そのからくりを知ってからはもうどうにも戻れないんです。