「知の統合は可能か」読了

東北大学の大隈典子副学長からの依頼を受けて、小説家の瀬名秀明さんとサイエンスライターの渡辺政隆さんとの語り合いから生まれたのがこの「知の統合は可能か」という600頁近い大作です。

瀬名秀明さんとは「小説ドラえもん のび太の鉄人兵団」からの繋がりなのですが、今回この本が出版されるにあたって僕のオリジナル曲の「誰かが鐘を鳴らしてる」の歌詞を引用して良いかとの問いあわせをいただきました。このような学術書的な本に僕の詞がと思いましたが、もちろん喜んでお受けしました。

そして3月末に出版されました、まずは送っていただいた本の厚さに驚きました。それから読み進めてなんとひと月かけて読み終えたという事になります。

大まかなテーマはCOVID-19を通して各分野のエキスパートの方々の知を統合は可能かということです。

全体を通してひとつの言葉が残りました。それは最終の第14章で瀬名さんがプロジェクト全体を振り返って書かれている中の”「私は正しい」問題”という言葉です。

実は自分が聖書の中で大切にしていることばがあります。それは「あなたは正しすぎてはならない。知恵がありすぎてはならない。なぜあなたは自分を滅ぼそうとするのか。」です。

世界の、社会の分断化を感じない人はいないと思いますが、それらをもたらすキーワードのひとつが「正しすぎる」ということだと思っています。「正しい」ことは良いことだと思いますが、それを振り回して最後には自分の非を認めることもできないくらい硬直してしまうことはありがちなことです。

自分とは異なる立場や考えを理解することぐらいできそうな感じがしますが、これはなかなか難しいことです。それは自分が追求してきたこと確信してきたことが変わることも覚悟しないといけないかからです。時には相手が「勝った!」という空気を醸し出したとしても自分が「勝ち負けではないところ」にいられる保証はありません。

本の中には「総合知」「統合知」「全体知」等々の聞き慣れない言葉が登場しますが、今回のCOVID-19が私たち人類の成熟度を測るテストになっている面があります。

そしてそこに露にされた私たちの性質はCOVID-19ほど巨大なことではなく、自分たちの信じるものや共同体、日々の生活に関わるローカルなことにまで及びます。

最近の自分の学びのテーマは「共に生きる」です。昨年はある読書会でそのテーマの本を読んでいたにも関わらず、その時には自分ごととして受け止めていませんでした。しかし今年に入ってからある出来事を通して自分が学ばなければならないテーマになりました。

600頁のこの本を手に取ろう!と思われる方はそう多くはないと思いますが、ほとんどの章は前後しても大丈夫ですので興味のある章から読み始めるのもありだと思います。

”「私は正しい」問題”を一緒に考えてみませんか。